エスカレートする“お家騒動”
同年秋場所前の9月1日、一部スポーツ新聞に「もう若乃花と話すことはありません。若乃花の相撲には基本がない。基本をしっかりやらないで、どうやって横綱の地位を守れるか、私には不思議です」と兄弟絶縁を激白。これに対し、2人の父親で師匠の二子山親方(元大関貴ノ花)は、「貴乃花は、掛かりつけの整体師に洗脳されている。この2年あまり、私たちには話をしてくれないんです」とショッキングな告白をした。
この親子・兄弟不和騒動は、テレビのワイドショーにとっては格好の話題となった。連日長時間を割いて報道したため、“お家騒動”は日増しにエスカレートしていった。
世間の耳目を集める中、始まった秋場所は、貴乃花は初日、2日目と白星。2日目に敗れた栃東は「これ以上ないという体勢になったのに、横綱は下半身が崩れない。それより感心するのは、あれだけマスコミに騒がれているのに動揺していないところ(笑)。俺が同じ立場だったら動揺しまくるよ(笑)」と、貴乃花の精神力に感心していた。
しかしやはり心の乱れはあったようで、3日目に魁皇に寄り切られて土俵を割ると、支度部屋では不機嫌そのもの。どんな質問にも「あんたの言う通り」とうわの空で返事を繰り返し、車に乗り込む前には「チクショー、このまま負けてられないよ。暴れまくってやる。最強横綱の意地? そうだよなあ、楽しくやろうぜ」と興奮気味にまくしたてた。
さすがに言いすぎたと思ったのか、翌日、琴乃若を破って引き揚げてくると「昨日は俺の悪い癖でついカッとなってしまって・・・。思っていることは言ったほうがいい? ありがとうございます。でも、活字になるとねえ・・・。反省してます」と、一変して殊勝な態度だった。
世間の同情は、絶縁状を突きつけられた若乃花に集まり、その期待に応えるように快調な土俵だった。8日目に若の里を突き落として1敗を守ると、「場所中の気分転換法? 今場所は(貴乃花との不仲を報じる)ワイドショーを見ることですかねえ(笑)」と報道陣を笑わせるなど、リラックスムードで対応した。