熱狂を生んだカタールワールドカップから約1カ月。

 メッシはゴールを決め、三笘薫はすでにカップ戦を含め5試合を戦うなど各国の代表戦士たちがピッチに戻り始めている。

 もっとも日本人選手が多くプレーするブンデスリーガは1週間後の21日に再開。日本代表の中心として、副キャプテンとして奮闘した遠藤航は所属するシュツットガルトのキャプテンとして後半戦を戦う。

 遠藤にとって初めてのワールドカップ。

 ピッチに立つまでには想像もしなかった大きな壁が存在した。大会直前の脳しんとう。それはどんな状態で、何を思っていたのか。

 ――本人が配信するコンテンツ「月刊・遠藤航」だけで記されたW杯レポート「揺れた脳とギブス」の後編をご紹介する。

第一回:【揺れた脳とギブス】「コスタリカ戦後、バスで曲がらなくなった右足」
第三回:【本心】スペイン戦前、口に出た一言「やっぱり、出られないのか……」

軽い口調

 遠藤航のカタールワールドカップまでの4年間は多くの人に勇気を与える。

 その時間はもっと語られていいし、参考にされていい。

 4年前。ピッチに立つことができないワールドカップ(ロシア大会)を経験し、ポジションが定まらない立場が続いた……。

 若き日の遠藤は突出した「何か」を認知されていたわけではなかった。自身も「結局、ポジション、どこ? ってよく聞かれました」というくらいである。

 Jリーグではそのほとんどをセンターバックで過ごし、浦和レッズの最終年には右サイドバックでもプレーしていた。ユーティリティと言えば聞こえがいいが、「Jリーグの中のいい選手」で終わる可能性もあった。

 そんな遠藤は、たった4年で「不動の日本代表MF」と言われるようになった。ワールドカップ前、ドイツ代表監督のハンジ・フリックは「ブンデスリーガで最高の守備的MFのひとり」と語っている。

 それだけではない。「1対1に強い」――「DUEL王」を代名詞とするまでに成長したのだ。    

 その評価は数字にも表れている。

 世界中のクラブ、代理人が参考にするといわれサッカー界でも影響力のあるサイトのひとつ「Transfermarkt」で発表される遠藤航の市場価格はロシアワールドカップ前で約2億円。それが、昨年の12月時点で約13億円と実に約600%アップした(現在は約8億5000万円)。