ドイツ・ブンデスリーガで2年連続デュエル勝利数(1対1の勝利回数)1位となった遠藤航。
明日、開幕するカタールワールドカップで日本代表が躍進するために欠かせないキーマンである。
そんな遠藤は、4年前のワールドカップでピッチに立つことなく、ベンチで大会を終えた。そこにあった悔しさをぶつけ、歩んできた道のりに何があったのか。
その秘密を探るべく、遠藤航が今月に刊行した『DUEL 世界に勝つために「最適解」を探し続けろ』を紐解く(全4回)。
第2回は「正解ではなく最適解を探す」と題して書かれた「マウスピース」にあった発見。
父親になって知った父親の偉大さ
「はじめに」に子育てについて触れましたが、「これって、難しいな」と思うことはたくさんあります。
そんなときに「正解を探す」ことを始めるのではなく、「正解はない」からスタートすることは、その問題を解決するときに役立ちます。
(南野)拓実との会話、日本代表と「選手」「チーム」の例をふたつ紹介しましたが(※編集部注:移籍について交わした会話、日本代表でチュニジア戦後にあった議論)、個人としても、正解を作らないことが、僕自身の人生を少しずつ豊かにしてくれたと思っています。
29歳のいま、僕は6人家族で過ごしています。
長男は小学4年生、長女が小学1年生、次男が6歳、末っ子が3歳で男の子です。妻はサッカー部のマネージャーをしていた同級生。
若くして、夫と父親になったわけですが、その立場はこれまでまったく想像していないものでした。「当たり前」にあると思っていたものは、例えば自分の父親、母親によって準備されていた、用意してもらっていた、ということを知るのです。
結婚をして最初にびっくりしたのが、家探しでした。
当時はまだ19歳。サッカー選手として「仕事」をしていたとはいえ、契約の段階になって「書類」の多さ、確認事項の複雑さに衝撃を受けました。
そして、この類のことは普通に生活していると頻繁にあることに気付きます。水道や電気を利用しようと思えば契約が必要だし、毎日元気に生活しようと思えば食事は自分たちで作らなければいけない。洗濯も掃除もなんだってそうです。
──これ、全部を両親がやってくれていたのか。
それまで感じたことのない家族への感謝の思いがグッと深まり、そのすごさ、ありがたさを身をもって知りました。
そもそも「知らない」ことが世の中にはたくさんある。
そのことがわかると、自分の身近な景色、これまで気に留めなかった日々の風景がまったく違ったものに見えてきます。
僕は「常に学び続ける」という言葉が好きなのですが、そうやって知らないものを知れること、学ぶことはとても有意義でした。それらは、自分の考えに合うもの、合わないもの、さまざまありましたが、どれもが「知っていて損はなかった」。