いよいよカタールワールドカップが開幕する。日本代表は23日に4度の優勝を誇るドイツ代表と初戦を戦う。

キーマンとなるのがドイツ・ブンデスリーガで2年連続デュエル勝利数(1対1の勝利回数)1位となった遠藤航だ。

先週のリーグ戦で相手選手と接触、脳震盪を起こし、現在はその回復プロコトルのさなか。選手生命にもかかわるだけに出場には慎重な判断が必要だ。

――それでも、森保ジャパンにおいて遠藤航がいるか、いないかではチームが大きく変わるのも事実だ。4年前のワールドカップではピッチに立つことのなく、ベンチで大会を終えた男はなぜ、必要不可欠な男にまで成長できたのか。

その秘密を探るべく、遠藤航が今月に刊行した『DUEL 世界に勝つために「最適解」を探し続けろ』に綴られた言葉から、そのヒントを4回にわたって探っていく。

第1回となる今回は、その哲学がつまった「はじめに」を紹介する。

サッカーと子育ての共通点

 僕には子どもが4人いる。

 一番下の子はいま3歳なので、僕にとっては4回目の「3歳児の子育て」中だ。はじめて「父親」になったのが20歳のときだから、「父親歴」はまあまああるほうだ。

 加えて、仕事であるサッカー選手は、平日に練習があるけど、午前で終わることも多く、子育て時間は一日の半分近くあって、さらにいえば、歳の離れた妹がいる僕は、小さいころからおむつ替えをやっていたし、なんとなく「子どもの面倒を見る」ことに慣れていた。

 若くして父親になったとき、「自分ならできる」という妙な自信を持っていたくらい。

 だけど……いまでもふとしたときに思う。……子育ては難しい。

 例えば〝言われたことをすぐやらなかったりする〟とつい怒ってしまう。あとで「ああ、もう少し優しく言えばよかったかな」と振り返って、「よし、もう怒らない」と心に決める。で、その数時間後にはまた怒っている。

 またやってしまった……と反省する。

 はたまた、昨日は「これをやりたい!」と言って楽しそうにしていたから、今日も「それ」を勧めると「やりたくない!」と駄々をこねる。

 なんで!? 苦笑いがつい出てしまう。

 4人の子どもと一緒に生活をし、奥さんと試行錯誤をしながらの日々。

 子育ては何度やっても難しいもんだな、と感じていたとき、ほかの「お父さん・お母さん」の話を聞く機会があった。

 それは、僕が毎月配信している『月刊・遠藤航』というコンテンツの中でのこと。

「サッカー選手・遠藤航」ではなく「父親・遠藤航」としての日々や、そこで考えていることを話すのがテーマだった。

 参加してくれているみなさんから質問をもらったのだけど、その質問の内容が「あー、わかる!」「うちもそうだ」「むしろそのやり方、みんなに聞きたい!」と思うことばっかりだったのだ。

 なるほど、みんな同じように感じているのか。

 ちょっとした発見だった。

「子育て」というと、自分が知らない「正解」や、すごい人が見えないところでやっている「秘訣」みたいなものがあるはずだ──漠然とそんなことを思っていた。

 かくいう僕は「ほかの人がどうしているか」ということがほとんど気にならないタイプなんだけど、こと「子育て」に関しては、「正解」「秘訣みたいなもの」があるなら、知りたいと思っていた。

 きっと、同じように考えている人も多いんじゃないだろうか。そして、ついつい「正解探し」をしてしまう。