欧州が中国製自動車の純輸入国になる可能性も

 中国は日本のパナソニックや韓国のLGなど外国企業を補助金の対象外にした。ベンチマーク社のアナリスト、アルバート・リ氏は「国内企業優遇の追い風があった。中国の継続的な研究開発と技術革新、インフラと工場の建設速度の速さ、労働力の優位性が、採掘から精製、加工、EVの製造まで完全なサプライチェーンの形成に役立った」と分析する。

「中国は独自のバッテリーサプライチェーンを育成し、その後、国内のセル生産者、他のバッテリー関連産業がすべて一緒になって力強く成長する船団を形成した」(リ氏)と指摘している。英シンクタンク、ヘンリー・ジャクソン・ソサエティー(HJS)は最新の報告書で、EVのサプライチェーンにおける中国リスクについて警鐘を鳴らしている。

 中国がEVの生産で先行することで欧州が中国製自動車の輸入国になり、これまで長年、輸出国だったパターンが逆転する可能性がある。背景にはEVの製造が比較的簡単、中国のバッテリー生産の優位性との相乗効果、国家による積極的な貿易措置と政策という3つの要因がある。

「中国はEVのサプライチェーンで中心的な地位を占め、近い将来、簡単に崩れることはない。EVとその上流製造工程への継続的な投資の規模を見れば、中国がこの支配力を失うつもりがないことは間違いない。中国のこれまでの行動を見ると、台湾や東シナ海など核心的利益を追求する際にこの立場を利用しようとする意志がうかがえる」(HJS報告書)