1回の充電で725キロメートル走行可能な

 ハイブリッドからEVへの切り替えが遅れたトヨタについて、英モータージャーナリスト、クエンティン・ウィルソン氏は筆者に「自動車市場は変化している。トヨタは自分たちが市場から遅れていることに気づいている。水素で走るクルマ、MIRAI(燃料電池自動車)も市場から遅れてしまった。電動化戦略がまだ十分にできていないからだ」と語る。

英モータージャーナリスト、クエンティン・ウィルソン氏(筆者撮影)

  トヨタの戦略についてウィルソン氏の評価は「ハイブリッド車の問題は、それが環境にとってそれほど素晴らしいものではないということだ。ハイブリッド車はバッテリーでそれほど遠くまで走ることができない。電気だけの航続距離は約30~50キロメートル止まり。ハイブリッド車の環境面での利点は非常に限られている」と極めて低い。

「30年にディーゼル、ガソリン車の新車販売を禁止する英政府の目標は米国の大気浄化法(1963年)と同様に極めて重要だ。自動車業界は短期間に素晴らしいEVを製造している。彼らを刺激して支援すれば、米ルーシッド・エアのように1回の充電で約725キロメートル走行可能で、2秒で時速96キロメートルに到達する車を作れる。自動車にとって歴史上、楽観的な瞬間だ」(ウィルソン氏)

米ルーシッド・モータースのCEO兼CTOのピーター・ローリンソン氏と、同社のラグジュアリーEV「ルーシッド・エア」。ローリンソン氏は元テスラのエンジニアだ(写真:ロイター/アフロ)

 トヨタも、フォルクスワーゲンも、大手自動車メーカーは一様に「イノベーションのジレンマ」から抜け出そうともがいている。COP27での英国など西側の動きはEVがすでに「未来」ではなく「現在」になっている中国を意識したものだ。電動化に関してはトヨタだけでなく世界が中国に取り残されている。ウィルソン氏が言うように楽観的にはとてもなれない。