11月14日、ロシアから奪還したヘルソンを訪問したウクライナのゼレンスキー大統領(写真:ロイター/アフロ)

(舛添 要一:国際政治学者)

 ポーランド外務省は、15日午後にロシア製とみられるミサイルがポーランドに落下し、2人が死亡したと発表した。落ちたのは、ウクライナ国境から6kmに位置するプシェボドフという村であるが、NATO域内で初めての被害者である。このニュースは瞬時に世界中に伝えられ、第三次世界大戦の勃発かという悲鳴が上がった。

ゼレンスキーの勇み足

 ゼレンスキー大統領は、直ぐにビデオ演説で「ロシアのミサイルがポーランドに着弾した」とロシアを非難し、この行為が「緊張を激化させる非常に重大な行為だ。NATOの行動が必要とされている」と訴えた。

 ロシアがポーランドを攻撃したとなると、NATOが対応せざるをえなくなり、ロシアと直接対峙することになってしまう。そのため、世界中で緊張が高まった。インドネシアのバリ島で開かれていたG20に出席していたG7の首脳も緊急に協議をした。

 その会合の後、バイデン大統領は、「初期段階の情報ではロシアからの発射でないとの情報もあり、調査が完了するまでは言いたくない。軌道からみてもロシアから発射された可能性は低い」と述べた。米諜報機関によるミサイルの軌道解析などから、そう結論したと思われる。

 また、ポーランドのドゥダ大統領も、落下したミサイルは、ロシアが意図的にポーランドを攻撃したものではないと慎重な姿勢を示した。

 さらに、NATOのストルテンベルグ事務総長も、ポーランドに落下したミサイルは、ウクライナの迎撃用ミサイルで、意図的な攻撃ではないと明言している。