“和製ソロス”の異名を取る浅井將雄氏(筆者撮影)

(国際ジャーナリスト・木村正人)

[シャルム・エル・シェイク(エジプト)発]米消費者物価指数(CPI)の上昇が市場予想を下回ったことで円を買い戻す動きが一気に強まり、円高が急激に進んだ。国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)の会場で、世界最大級の債券ヘッジファンド「キャプラ・インベストメント・マネジメント」(ロンドン)共同創業者、浅井將雄氏を直撃した。

今年から来年にかけて米国は1980年以来の物価高騰に

――コロナ危機からの復興に伴う需給の逼迫、ウクライナ戦争が悪化させたエネルギー危機で世界経済はインフレの荒波にのみ込まれています。10月の米CPIの上昇は前年同月比で7.7%に収まりましたが、インフレは大体どれぐらいで落ち着くとみられていますか。

浅井將雄氏(以下、浅井) 米CPIが2021年から高騰し始め、22年6月、対前年同月比の上昇率が9.1%に達しました。ウクライナ戦争の影響もあって欧州全体のインフレも加速し、欧州単一通貨ユーロ圏では10月に10.7%に達しました。米国で14%を超えた1980年以来の非常に高いインフレが世界全体に広がっています。

 インフレ指標というのは計算上、対前月比、もしくは対前年同月比でみます。今年、対前年同月比で10%という数字になって来年も10%というような上昇にはならずに、来年の数字自体はやや落ち着いてくるでしょう。米連邦準備理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)は、来年は4%弱、再来年は2%後半というように2年かけて緩やかに2%台に近いところまで戻ってくるというシナリオを描いています。

 数字としてはヘッドラインのCPIは下がってきますが、物価自体の大幅な上昇が22~23年にあり、1980年以来の物価高騰となるのは紛れもない事実だと思います。

――FRBはインフレ退治を優先する方針を示しています。政策金利は5%ぐらいまで引き上げられるのでしょうか。

浅井 今年に入って複数回にわたる75ベーシスポイント(1%の100分の1)の大幅な利上げが行われています。2000年以降、リーマンショック前の利上げスピードや、2015年以降の利上げスピードを大幅に上回る非常に早い、急激な利上げを実施しています。

 市場は「ニュートラルレート(経済・物価に対して引締的にも緩和的にも作用しない中立的な金利)」と呼ばれる5%をやや超えるような水準までFRBが23年前半に向けて段階的に利上げしていくことを予想しています。