中国の相対的な衰退は緩やか

 スタンフォード大学のオリアナ・スカイラー・マストロ氏と、シンクタンクのアメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)に籍を置くデレク・シザーズ氏はフォーリン・アフェアーズ誌への寄稿で、中国の「急降下」が生じる公算は小さいと論じている。

 仮に起きたとしても、相対的な衰退は恐らく緩やかに進む。

 一方で、軍事力は成長を続ける。中国は台湾の制圧を望むだろうが、急ぐ必要はない。

 まだ上り調子であろうともうピークにさしかかっていようと、中国は攻撃的になりやすい、と両氏は見る。

 だが、米国は「長期的に争える力を損なう短期的な解決策」を避けるべきだと述べている。

 ジョー・バイデン大統領は中国のことを米国の覇権に対する最大の脅威と見なしているが、今のところは主に経済的・政治的な挑戦者として扱っているようだ。

 大統領が打ち出した来年度の防衛予算要求は、2030年代に入ってから軍事的脅威が最も切迫することを示唆している。

 金額の伸び率がインフレ率を下回っているうえ、将来の兵器の研究開発に多額の投資を行うとしているからだ。

 すでに中国を下回る米国の海軍力の規模はさらに縮小し、2030年代になってから再び拡大に転じる。

 米英とオーストラリアの合意「AUKUS(オーカス)」によるオーストラリアへの原子力潜水艦提供が実現するのは、恐らく2040年以降だろう。

それでも不安を抱き、軍備を増強する米国

 しかし、米軍の主要な幹部たちは不安を抱いている。

 かつてインド太平洋軍司令官を務めたフィリップ・デービッドソン退役海軍大将は、「脅威はこの10年(2020年代)で明白であり、今後4、5年も確実にそうなる。海の底から宇宙空間に至るまで、中国は力を増してきている」と主張している。

 デービッドソン氏の後任に当たるジョン・アキリーノ司令官(海軍大将)は、中国は2027年までに軍の近代化を終えたがっていると述べている。

 今年3月には上院で、タイムラインが短縮されていると述べた。

 インド太平洋軍司令部が希望しながらまだ予算が付いていない事業の規模は計15億ドルに上る。