バーの酔っ払いか悪意を持ったマフィアか?

 この仮説の2つの要素――中国がピークを迎えつつあることと戦争が間近に迫っていること――はどちらも、ほかのアナリストたちの反論にさらされている。

 だが、ワシントンの時代思潮のようなものをとらえている。

 専門家の間では、中国の減速は「中所得国の罠(貧しい国々は適度に豊かな国々よりも経済成長で苦労するとの説)」に突き当たったことを意味しているのかという議論が交わされている。

 米中間の敵意の高まりや台湾をめぐる軍事的緊張についても懸念している。

 中国の意図の分析は大きな意味を持つ。なぜなら、その分析が米国の政策に影響を及ぼすからだ。

「中国はただのバーの酔客なのか、それともウィスキーをちびちびやりながら悪意のこもった視線を送るトニー・ソプラノ(編集部注:人気ドラマの主人公のマフィア)なのか」

 シンクタンクの米戦略国際問題研究所(CSIS)のジュード・ブランシェット氏はこう問いかける。

「もし中国が目先の脅威だと考えるなら、我々はあらゆるものを投げつけて中国を軍事的に抑止し、世界の秩序をめぐって争うことを忘れてしまうだろう」

中国崩壊の予想はことごとく外れてきた

 中国の崩壊を予言して大失敗した専門家は大勢いる。

 それでもブランズ氏とベックリー氏は、中国に素晴らしい成長をもたらした複数の要因がここに来て逆回転していると指摘する。

 まず、人口ブームは破裂に向かっている。

 市場改革はじわじわ後退し、経済が再び中央集権化され、ハイテク企業が脅され、国は債務を制御しようと奮闘している。

 政治支配を少し緩めた「賢明な独裁体制」は抑圧的な体制に逆戻りし、技術監視国家を作り出すに至っている。

 裕福な国々は中国の台頭を受け入れるどころか、中国との貿易を制限し始めた。

 エコノミストのなかにはトマス・オルリク氏のように、中国の統治者たちはシステミックな危機を回避するのに十分な資源と規制手段と経験を持つと主張する向きもある。

 オルリク氏が中国経済について書いた『China: The Bubble That Never Pops(中国:決して弾けないバブル)』は新版が間もなく世に出る予定だ。