「日本を代表する経営者」のタイプ
「平成の経営の神様」稲盛和夫が亡くなった。90歳だった。また一人、日本を代表する経営者がいなくなった。
「日本を代表する経営者」にはさまざまなタイプがある。例えば、ソニー創業者の井深大やホンダ創業者の本田宗一郎などは、モノづくりの天才だった。2人とも数多くのヒット商品を生んだが、マーケティングによって消費者の求めるものを察知したのではなく、自分のつくりたいもの、自分の欲しいものが、消費者の欲望を喚起し、市場を開拓したところも共通する。しかもそろって経営には無頓着で、井深には盛田昭夫、本田には藤沢武夫がいて、それぞれ二人三脚で会社を発展させたところもそっくりだ。
日本の消費文化を大きく変えた2人といえば、ダイエー創業者の中内功とセブンイレブン創業者の鈴木敏文だろう。価格決定権は消費者が持つべきという中内の思想は、日本の小売業に革命を起こした。24時間365日営業の店舗を全国津々浦々に行き渡らせた鈴木敏文は、日本人の生活様式を大きく変えた。
現代の日本を代表する経営者として、よく名前の上がるのが、ファーストリテイリングの柳井正とソフトバンクグループの孫正義だ。2人とも飽くなき事業欲を持ち、一瞬たりともその歩みを止めようとしない。孫は「経営ほど楽しいゲームはない」と語っていたが、彼らは心底、会社経営と事業拡大を楽しんでいる。だからバトンタッチをしようとしても、結局は自分が再び最前線に戻ってしまうところもよく似ている。
このように、日本を代表する経営者はいくらでもいるが、「経営の神様」と呼ばれた経営者は、稲盛と、「昭和の経営の神様」である松下幸之助の2人以外にいない。そしてこの2人には共通項は多い。