さらに、ロシアが2014年に併合したクリミアに大規模な攻撃が行われれば、それも同様に深刻な事態になると述べている(8月9日にはクリミアの空軍基地で爆発が起きている)。

 一部からは、プーチン氏が自分自身を国家だと見なしている場合はどうなるのか、との疑問も示されている。

 プーチン体制にとって危険な事態はロシアの存立を脅かすと見なされるのではないか、というわけだ。

水平方向エスカレーション、4つのシナリオ

 チャラップ氏らが先日執筆したランド研究所の論文は、水平方向のエスカレーションのシナリオを4種類提示している。

 第1のシナリオには「経路0」というレッテルが貼られている。

 事態がすでにスパイラル的にエスカレートしている可能性があるためで、ロシアは軍事的・経済的損失を被ったら、すぐではないにしても「しかるべき時期に」報復するというものだ。

 第2のシナリオは、例えばNATOがロシア国境の近くにミサイル発射システムを配備した後、ロシアがNATOの介入が近いと考え、先制攻撃をかけるというもの。

 第3のシナリオは、ウクライナを支援する西側の軍事物資補給線を叩くというもの。

 そして第4のシナリオは、「ロシアの国内的、経済的、政治的な不安定性が劇的に高まる」というものだ。

 ほとんどの場合、ロシアの報復は恐らく密かに始まる。例えばサイバー攻撃、破壊工作、暗殺などによる報復だ。

 一方、軍事攻撃に最も発展しやすいのは先制攻撃のシナリオだ。下手をすれば核攻撃にさえ至りかねない。

 複数のシナリオが重複する可能性もあり、チャラップ氏は「ロシアが劣勢ならすべてのシナリオの危険度が高まる」と付け加えている。