どちらになっても、米国はほぼ間違いなくロシアとの直接対決に引きずり込まれる。
片やジョー・バイデン大統領は、「第3次世界大戦」は絶対に回避すると約束している。
ウクライナが南部ヘルソンの奪回に向けて動き出すことが、一つの試金石になる。奪回に成功すれば、適切な支援さえあればウクライナにも勝機がある証拠だとタカ派は考えるだろう。
片やハト派は、ヘルソンを奪回すればプーチン氏をさらに極悪非道な振る舞いに駆り立てかねないと気をもんでいる。
米ロが直接衝突に至る「一線」
プーチン氏はウクライナに侵攻したその日、介入を検討している部外者は「これまでに見たことのないような」結末に直面することになると脅した。
ロシアの国営メディアは、西側への核攻撃について空想にめぐらせている。
しかし今のところ、ロシアが核抑止部隊に一段と高度な警戒態勢を取らせた兆しは見られないと米国は述べている。
また米国とロシアは今でも、それぞれの長距離核ミサイルについての情報を交換している。
バイデン氏はロシアに軍縮交渉の再開を呼びかけた。ロシアは制裁が現地査察の再開を妨げていると話している。
戦闘が続いたこの5カ月の間、これを超えたら米国とロシアの直接衝突になるという「一線」は繰り返し移動しており、西側に悲惨な結末がもたらされるには至っていない。
「NATOは実に見事に支援を小出しにしてきた」
米国のシンクタンク、カーネギー国際平和財団のジェームズ・アクトン氏はこう指摘する。
「ウクライナにかなりの量の支援を提供しつつ、ロシア側が『これ以上はダメだ』と口を挟める隙を与えなかった」
これには異論もある。米国の駐欧州陸軍司令官を務めた経歴を持つベン・ホッジス氏は「小出しにすれば、命を落とす無辜のウクライナ市民が増える」と反論する。
またバイデン政権は「事態がエスカレートするリスクを誇張してきた」とし、ロシアはNATOとの対決を望まず、核兵器による反撃の公算は極めて小さいと話している。