意図的であろうとなかろうと、バイデン氏の政策はこの戦いを長期戦に、あるいは過酷な膠着状態にしてしまう公算が大きそうだ。
従って、有権者がスタグフレーションやエネルギー不足、ウクライナ支援の金銭的負担などに反旗を翻せば、西側諸国の結束と持久力はリスクにさらされる。
プーチン氏の思惑はそこにあるのかもしれない。
戦争の瀬戸際は判別が困難
とはいえ、フラストレーションと不確実性は、核の使用を思いとどまらせる性質を帯びている。
実際、米国は直接介入を思いとどまっているし、ロシアはNATO攻撃を思いとどまっている。
経済学者で核戦略家でもあった故トーマス・シェリング氏は、戦争が始まる瀬戸際にいるかどうかは誰にも知り得ないことかもしれないと語っていた。
瀬戸際と言ってもそれは「しっかりと立って下をのぞき込み、転落してしまうかどうかを見極められるような断崖絶壁ではない」。
湾曲した滑りやすい坂であり、「そこに立つ人も傍観者も、どれほどのリスクがあるのかはっきりとは分からない」場所だというのだ。
差し迫っている危険が破滅的な核兵器の撃ち合いであるとしたら、慎重に振る舞っている政治指導者を非難することなど誰ができようか。