わずか2年で外相から統一戦線部長に戻った李善権氏(写真:ロイター/アフロ)

(郭 文完:大韓フィルム映画製作社代表)

 終戦記念日も近いので、今回は北朝鮮の「特攻隊」についてお話ししようと思う。

 北朝鮮にも「特攻隊」という言葉がある。発音は「トッコダイ」で、文字通り、日本語の「特攻隊」から派生した言葉だ。ただ、その意味は少し異なり、「傍若無人」、あるいは「ゴーイングマイウェイ」を意味する。

 そして最近の北朝鮮では、外相から再び統一戦線部長に任命された李善権(リ・ソングォン)氏を指す言葉でもある。

 2020年1月、金正恩(キム・ジョンウン)総書記が外交経歴の全くない李善権氏を北朝鮮外相に任命した際に、「今、我々の外交は李善権のような特攻隊気質が必要だ」と言及したことに由来する。

 その後、今年6月に金正恩氏は李善権氏を元のポジションである統一戦線部長に戻した。その理由については後ほどお伝えする。
 
 李善権氏は1958年に、黄海南道海州で生まれた。朝鮮人民軍板門店代表部に長く籍を置いていた李善権氏は北朝鮮軍出身の対南交渉の専門家で、2006年から南北将軍級会談と実務級の軍事会談に北側代表として参加した人物である。2010年以降は、南北開城工業団地協議会の北側団長を務めている。

 2005年から2014年まで、27回にわたって南北軍事会談の北側代表として参加した李善権氏は、統一戦線部の傘下機関である祖国平和統一委員会(祖平統)の委員長を兼ねるなど、名実ともに北朝鮮の対南専門家としての地位を確立している。

 そんな李善権氏が金正恩氏の目に留まったのは、南北将軍級会談や実務級の軍事会談で見せた「特攻隊」的な振る舞いによる。相手に配慮することなくズケズケとモノを言う姿が金正恩氏の関心を引いたのだ。

 李善権氏の「特攻隊」的な振る舞いは、文在寅(ムン・ジェイン)政権になって、さらに目立つようになった。