モデルハウスを減らして経費削減を図る

 住宅展示場への来場者は減っているとはいえ、最終決定の段階ではモデルハウス見学が不可欠と考えている人が多いため、その重要性は変わらない。ただ、かつてのように展示場への出展数を増やせばいいというものではない。まずはインターネットで自社商品の優位性をアピールし、それを見て、触れて、体感できる最先端のモデルハウスに誘導する必要があるのだ。

 そのため、大手住宅メーカーの多くでは、出展数を絞り込む傾向が強まっており、大手各社の決算資料などを見ても、年々住宅展示場のモデルハウス数の減少傾向がはっきりしている。

 モデルハウスは減らしても、そこに誘導するためのルートをきちんと確立し、成約率を高めていけば、売上高を伸ばせる。しかも、モデルハウスの建設費や、それを維持していくための人件費などの維持費を削減できるので、利益率を高める効果も期待できるのだ。

買い物ついでに気軽に訪れることができる

 そのために各社ともインターネット上での情報提供に力を注ぎ、集客力を高める努力を行っているが、そのほかにもさまざまなルートづくりが進められている。

 そのひとつとして話題になっているのが、2022年5月28日にオープンした大和ハウスグループの「LiveStyle Shop(リブスタイル・ショップ)つくば」だ。同社が運営する大型商業施設「イーアスつくば(茨城県つくば市)」内に出店し、“営業しない”ことをうたい文句に、これまでにない店舗形態となっている。

リブスタイル・ショップつくば(写真提供:大和ハウス工業)

 分譲マンションなどでは、百貨店などにモデルルームを設けたり、商業施設に相談コーナーを設置したりするケースはあるが、物件名や分譲会社名などが前面に出ていると、消費者はどうしても身構えてしまうものだ。

 その点、「リブスタイル・ショップつくば」は、住宅メーカーらしさはあまり感じないつくりとなっている。「イーアスつくば」が開店しているときには店を開き、年末年始を除き原則年中無休。買い物ついでに気軽に立ち寄ることができ、予約も必要としない。そうした形態から、初めて訪れる人でもハードルが低いといえる。

 しかも、後に触れるように「リブスタイル・ショップつくば」には社員スタッフを配置していないので、人件費の削減にもつながる。強引な営業活動を行わず、住宅への関心がさほど高くない層にも幅広く最新の住宅の機器などの魅力を伝えて、少しずつ関心を高めてもらおうという狙いのようだ。

「イーアスつくば」の最寄り駅は、つくばエクスプレスの「研究学園」駅で、徒歩4分の駅近立地。売り場面積約8.5万m2の大規模商業施設で、2021年度の年間来場者数は約1180万人を誇る。これだけの集客力がある商業施設だけに、「リブスタイル・ショップつくば」への期待も大きい。