(山下 和之:住宅ジャーナリスト)
注文住宅といえば、住宅展示場にできるだけ多くの来場者を集めて契約を勝ち取るというのが基本的な営業戦略である。現在の大手住宅メーカーが急成長した1970年代から1980年代にかけて確立し、以降40年もの間、ほとんどやり方は変わっていない。だが、その営業手段が大きな曲がり角を迎えている。
不動産の情報収集の主役は「インターネット」
いま、住宅・不動産業界において、物件情報収集の中心はインターネットに移っている。【表1】にあるように、建て売りの分譲戸建住宅や分譲マンションでは、情報収集先のトップは「インターネット」で、分譲マンションでは6割近い人がインターネットで物件情報を集めている。それに対して「住宅展示場で」という人は1割強にすぎない。
一方、注文住宅は5割近い人が「住宅展示場」と答えており、「インターネット」は3割以下にとどまっている。相変わらず住宅展示場が強いわけだが、住宅展示場の割合も2011年度の54.1%から低下傾向にあり、反対にインターネットは2011年度の13.0%から27.5%とほぼ2倍近くに増えている。
ことに、2020年から始まったコロナ感染拡大の影響で、住宅展示場への集客力は大幅に減少しているといわれる。
気に入った住宅の「絞り込み」が進んでいる
【表2】は、住宅メーカーや住宅関連の業界団体で構成される住宅生産団体連合会が、加盟企業の営業所や住宅展示場などの責任者を対象に「最近の顧客動向」について質問した調査結果である。
展示場などの見学会やイベントなどの来場者数については、49%の責任者が「減少した」と答え、「増加した」はわずかに17%だった一方で、WEBからの引き合い件数については「減少した」とする責任者は12%にとどまり、「増加」が47%に達している。
消費者の多くは、まずインターネットで情報収集して、気に入った住宅を一定数に絞り込み、展示場で実際のモデルハウスに触れてから、契約先を決めるようになっているといっていいだろう。ある大手住宅メーカーの責任者はこう語っている。
「たしかに住宅展示場への来場者数は約4割減っているのですが、インターネットで絞り込んでからピンポイントで見学に来られるので、契約率は約1.3倍程度に上がっています」