宗教と政治の接点、戦前は戦争で今は選挙協力
その全体主義的ムラ社会の中心にあったのが寺院で、寺院とムラとを結びつけていたのは農地でした。その寺領農地がことごとく、小作人に払い下げられることになったのです。
明治期の廃仏毀釈と同じような歴史構造です。そして農地改革と同時に、信教の自由が復活します。すると、再び多くの宗教法人が誕生していきます。この戦後間もない頃の新宗教教団の乱立の様子は、「神々のラッシュアワー」と呼ばれています。
日本に旧統一教会が入ってきたのもこの頃です。仏教の力が衰え、相対的に新宗教が勃興し、反社会的な動きを始めた例はオウム真理教事件が記憶に新しいところです。
敗戦、そしてその後の共産主義勢力の拡大。それに危機感を覚えた旧統一教会と安倍氏の祖父、岸信介元首相が「反共」で一致します。統一教会側にとっては願ったり叶ったりでした。最高権力である総理大臣と接点ができると、それを利用しない手はない。戦前は戦争協力でしたが、今の時代は選挙協力ということでしょう。
結果的には、今回の安倍元首相の狙撃事件という悲劇を招くことになりました。しかし、国家と宗教の長い歴史を俯瞰すれば、ひょっとして予測ができたことかもしれません。国家と宗教の距離が接近すれば結果的には、互いが崩壊することは歴史が証明しているのです。