喫茶店で300食分のモーニングの仕込み
物流倉庫の作業はトラックから荷物を下ろし、各地域のコンテナに積み分ける肉体労働だ。深夜帯はLさんのような中高年の男性もいたが、人の入れ替わりが激しかった。
その中で、真面目に仕事を続けるLさんは、会社の目に留まった。
「物流倉庫の会社から、『契約社員になりませんか、監督的な立場をやって欲しい』とスカウトされたのです」
しかし、疲労が重なっていたLさんは、「夜働くなら移動時間を減らし、少しでも体を休められる時間を増やしたい」と考えるようになった。そして、物流倉庫のバイトを始めて4年、Lさんの体を心配した妻が新しいバイトを見つけてきた。
自宅から徒歩10分ほどのところにある喫茶店で、夜21時~深夜1時まで、モーニングのサンドイッチを作る仕事だ。マスターとその奥さんと3人で、パンを三角に切り、レタスとベーコンを挟むという流れ作業で、一晩に300食を作る。時給は1300円。
「学生時代に中華料理屋でアルバイトした経験があって、料理は好きなんです。週末はよく子どもたちのためにオムライスを作ったりしていましたから」
さらに、Lさんはスイミングスクールのインストラクターも始めた。水泳は子どもの頃から習っていた。こちらは日曜日の10~16時で日当1万円。ただし、この仕事は思いのほか体力を使うため、1年ほどしか続けられなかった。
中高年男性に副業の話を聞いていると、若い頃のアルバイトや趣味の経験が生きたというケースは多い。何でもやっておくものだなと思う。
さらに喫茶店のバイトがない曜日は、日当1万2000円のデパートの内装工事のバイトも始めた。Lさんの本業の会社は、ターミナル駅の近くにあり、デパートなら会社帰りにすぐに行ける。
このバイトとの出会いが、Lさんの転機になった。