民衆の暴動を受け、国外に脱出したスリランカのゴタバヤ・ラジャパクサ大統領。撮影は2020年1月(写真:AP/アフロ)

経済危機に直面し、首相が国の「破産」を宣言したスリランカ。強烈なインフレに民衆の暴動は激化し、ゴタバヤ・ラジャパクサ大統領は国外に脱出した。混乱を招いた最大の要因は農業の崩壊だ。根本にあるのは、過剰なまでに環境に配慮した「良い」国家を目指したことにある。ESG(環境・社会・企業統治)スコアを上げようと努力し、温暖化ガス排出ゼロを目標に掲げることは果たして正しいのか。

(杉山 大志:キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

経済崩壊導いた有機農業の強行

 スリランカは大規模な貧困、インフレ、燃料不足に見舞われ、首相は、国が「破産」したと宣言した。10万人規模のデモが起きて大統領府になだれ込んだ。ゴタバヤ・ラジャパクサ大統領はモルディブに逃亡したのち、辞任を表明した。

 スリランカのインフレ率は6月に54.6%となっていた。5月以降だけで、食品価格は80%、交通機関の料金は128%上昇した。

 日本ではこの破綻の原因として「中国の債務の罠に嵌った」とする報道があったが、これは当たらない。

 スリランカが海外からの借り入れに頼り無謀な投資を続けてきたのは事実だが、中国の債務はスリランカの債務全体の1割に過ぎない。中国はむしろ、親中的なスリランカの政権を20年にわたって支えてきたのであり、その破滅は望んでいなかった。この点は中国問題グローバル研究所所長で筑波大学名誉教授の遠藤誉氏が詳しく書いている

 将来的に債務の罠に嵌めるつもりがあったかどうかは知る由がないが、少なくとも、これまでは一帯一路の一部としてのスリランカの繁栄を望んでいた。

 スリランカ経済崩壊の理由には、無謀な借金による投資拡大の他に、コロナウイルスの蔓延による観光業の壊滅、ウクライナの戦争によって引き起こされた世界的なエネルギー危機などの要因もあった。

 だがもっとも根本的な問題は、有機農業の強行による農業の破滅だった。