2021年8月、気候変動問題を担当するケリー米大統領特使と会談する菅義偉・前首相(右)。菅政権時代、日本は2050年カーボンニュートラルを宣言した(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

(杉山 大志:キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

経団連の資料が示すCO2減少の実態

 日本の産業部門のCO2が減っている。

 その理由は何か。

 経団連の資料(2021年度 カーボンニュートラル行動計画 第三者評価委員会 評価報告書、2022年3月30日)を見ると、

(1)経済活動量の変化
(2)CO2排出係数の変化(エネルギーの低炭素化)
(3)経済活動量あたりのエネルギー使用量の変化(省エネ)

に要因分解をしている。


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※本記事には3つの図表が出てきます。配信先のサイトで表示されない場合は以下をご確認ください(https://jbpress.ismedia.jp/articles/gallery/70455


 そして同資料では、以下のように書いている(「CN」はカーボンニュートラル、つまりCO2排出ゼロの意味)。

(評価とコメント)
2030 年度の産業部門の政府目標は 2013 年度比で 6.5%削減(実行計画策定時)と 38%削減(CN 行動計画策定時)に対して、CN 行動計画の産業部門では、2020年度実績で既に 20.8%削減されたことは、評価に値する。また、全ての委員が、産業界の継続的な省エネ努力によって 2013 年度から 2020 年度までの CO2排出量が常に減少し続けていることを高く評価ないし評価に値すると考えている。

 何だって??? どう考えてもおかしい。この図表を見れば、「(1)経済活動量の変化」がCO2減少の最大の原因であることは明らかだ。

 真ん中の「2013年度比」で見てみよう。「(1)経済活動量の変化」、すなわち産業の衰退でCO2が18.2%も減少した。「(2)エネルギーの低炭素化」はわずかに3.9%のCO2減少をもたらしたにすぎない。「(3)省エネ」に至っては何と1.4%のCO2増加要因(!)だ。

 この事情は「2005年度比」でも「2019年度比」でも似たり寄ったりだ。

 つまり日本の産業が衰退したのがCO2減少の最大の理由だ。エネルギーの低炭素化も、省エネも、あまりCO2減少に寄与していない。

 2020年度はコロナウイルスの蔓延があったので、特に経済活動量が落ち込んだという特殊事情はある。しかし、この図は、今後日本で起きることを暗示している気がしてならない。日本の産業はますます衰退して、それによってCO2は減少する一方なのではないか?