ロシアによるウクライナ侵攻の激化に伴って急上昇したエネルギー価格。代表的な原油先物価格は、3月上旬に一時1バレル=130ドルを突破したが、足元の相場は100ドル前後で落ち着きを取り戻しつつあるようにも見える。相場の現状や見通し、そして脱炭素や原発回帰の動きについて、日本エネルギー経済研究所の小山堅・専務理事に話を聞いた。(聞き手、河合達郎、フリーライター)
──3月上旬に高騰したエネルギー価格ですが、落ち着いていく方向と見ていいのでしょうか。
小山堅氏(以下、小山):エネルギー価格は今でも高い水準ですが、ここからはすぐにはなかなか下がってこないと思います。逆に、また一気に上がる可能性もあると見た方がいいでしょう。
3月7日の価格高騰は、米国、カナダ、英国といった国々がロシア産のエネルギーを禁輸する方針が明らかになり、いよいよロシアへのエネルギー制裁に手が付けられるとの警戒感を市場が強く意識した結果として起きたものでした。
ただ、実態としては、自国に資源を豊富に持つ米国やカナダは、そもそもロシアのエネルギーを輸入していません。価格がその後も上昇を続けず下がったのは、禁輸と言っても、その中にロシアにエネルギーを依存している本丸と言うべき欧州の国々が入っていないのを市場が理解したということです。供給懸念に対する最初のリアクションで上がった分、剥落しました。
ただし、これから先も制裁がさらに強化され、禁輸が拡大していく可能性は残っています。G7(主要7カ国)とEU(欧州連合)は4月上旬、石炭の禁輸を決めました。市場は「石炭に踏み込んだということは、ひょっとすると石油やガスも……」と頭の中に描いています。
そもそも昨秋以降、需給のひっ迫を要因として価格は高い状態でした。その水準をウクライナ危機がかさ上げしている状況です。これではなかなか価格は下がりません。
もしこれから先、エネルギー資源の禁輸がさらに拡大していくということになれば、原油や天然ガスの価格は再び急騰する可能性があります。