円安が急速に進んでいる。相場を一段と急落させたのが、日本銀行による金利抑制策だ。政府内からも「急激に変動することは望ましくない」(鈴木俊一財務相)と懸念の声が出る中、円安に弾みを付ける日銀の姿勢をどう見るべきか。元日銀審議委員の木内登英氏(野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミスト)に聞いた。(聞き手、河合達郎、フリーライター)
──1ドル=125円まで円安が進行しています。足元の状況をどうとらえますか。
木内登英氏(以下、木内):かなり円安が進行している状況だと言えます。為替に適切な水準というのはなかなか答えがありませんが、円の実力を示す実質実効円レートは50年ぶりの低い水準です。円安の恩恵を受けやすい日本の輸出企業はかなり競争力が高い状況である一方で、国内の消費者は海外のモノをかなり割高で買わなければなりません。
円安になることのメリット・デメリットは両方あり、その出方は時々によって違いますが、現状は円安のデメリットが出やすい環境ではないでしょうか。
一つは、輸出企業の競争力はもうすでに十分高く、これ以上のプラス効果は出にくい状況だということです。円高から円安に振れれば、その効果は高いでしょうが、現状の円相場は異常に低い状況です。むしろ、円安が原油など物価高を助長させ、輸入原材料にかかるコスト増につながる負の側面が際立つ懸念があります。
もう一つは、この2年間のコロナ禍で大きな打撃を受けた国内型のサービス業などにとっては、円安が追加のマイナスとなります。
例えば、運輸・輸送業はコロナの影響で売り上げが落ち、さらに燃料の高騰でコストが上がり、両面から収益が悪化するという状況になっています。コロナの打撃が大きかった日本経済のウィークポイントに対して、円安が追い打ちをかけているような状況です。
──相場の先行きはどう見ますか。