ウクライナ情勢を受け、世界の株式市場が乱高下を続けている。戦況や各国政府高官の発言に対し、一喜一憂して反応する市場関係者の不安定な心理を映し出しているようだ。
混沌とする世界をどう読み解き、そして、個人としての資産形成をどう進めていくべきなのか──。投資信託「ひふみ」シリーズを手がけるレオス・キャピタルワークスの三宅一弘・経済調査室長に分析を聞いた。(聞き手、河合達郎、フリーライター)
──まずは世界経済の現状を確認します。ウクライナ情勢が及ぼしている影響をどう分析していますか。
三宅一弘氏(以下、三宅):ロシアによるウクライナ侵攻は、大きく二つのルートから世界経済に悪影響を与えていると考えています。一つ目は、インフレ率や金利の押し上げを通じて、景気の下振れ圧力が働くというルートです。
ロシアの経済規模は、世界のGDPに対しておよそ1.7%で、韓国のGDPをやや下回るくらいです。規模としてはさほど大きくないというのが一般的な評価だと思います。影響が大きいのは、ロシアが資源エネルギー大国であるという点です。原油、ガス、石炭のほか、ウランやニッケルも含め、ロシアに対する経済制裁でそうした産品が流通しなくなるということが、価格急騰につながっています。
もう一つのルートは、投資家のリスクオフマインドです。やはり今回の問題は、投資資金にとってリスクオフという姿勢にならざるを得ません。それに伴う株安や資産価格の下落は消費の下押し要因になりますから、こちらも経済にとってマイナスの影響となります。
厳しい欧州、底堅い米国 経済への影響度合いは地域で濃淡
三宅:こうした影響の出方については、地域別にかなり濃淡が分かれてくるでしょう。
最も深刻なのは欧州です。衝突の現場に近く、エネルギーのロシア依存度が高いからです。今後、欧州経済は厳しい状況を迎えると予想しています。今年後半には、リセッションに陥るリスクが注目されてくるのではないでしょうか。
一方、米国の経済がガクッと下方修正になるということはないと見ています。地理的に離れている上、原油や天然ガスの産出量では世界一の資源大国でもあるからです。
もちろん、これだけ企業が多国籍展開し、グローバル化した世界ですから、影響を受けるリスクは十二分にあるとは思います。米国の今年の実質GDP成長率は4%くらいだというのが大方の見方ですが、3%とか2%に減速する可能性はあるでしょう。ですが、これがマイナス成長近くにまで下がり、景気後退に陥るリスクまでは、今のところ低いと予想しています。
同じように、カナダ、豪州、ブラジル、インドネシアといった資源を豊富に持つ遠方の資源大国においても、甚大な影響は小さいと見ています。
──米国でもインフレが進行していますが、景気に波及する心配はないでしょうか。