(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)
米WTI原油先物価格は1バレル=110ドル台半ばで推移している。2カ月半ぶりの高値だ。ロシアがウクライナに侵攻して3カ月が経ち、原油価格の1日当たりの値動きが激しくなっている感が強い。
西側諸国の増産加速要請に応えないOPECプラス
まず供給サイドの動きから見てみたい。
OPECとロシアなどの大産油国からなるOPECプラスは6月2日の会合で「今年(2022年)7月の原油生産目標を日量43万2000バレル引き上げる」ことを決定した。
OPECプラスは2020年4月に合意した大幅な協調減産を昨年7月から毎月日量約40万バレルずつ緩和してきたが、このところ実際の生産量が目標に届かない状況が続いている。OPECプラスの4月の原油生産量は目標よりも日量260万バレルも下回った。
記録的なインフレに悩まされている西側諸国は、OPECプラスに対して増産を加速するよう繰り返し要請してきた。だが、OPECプラスは「世界の原油市場のバランスは取れており、最近の価格上昇はファンダメンタルズとの関係がない」とのスタンスを変えていない。