米バイデン大統領が、インフレ抑制策のひとつとして中国向けの関税引き下げを検討している。中間選挙での逆風が予想される中、経済界に対して配慮する必要性が高まったことが原因だが、対中関税を元に戻せば、中国封じ込めの戦略は逆回転する。この問題は、政治的には中国と対立しながら、経済的には中国に依存する日本にとっても重要である。(加谷 珪一:経済評論家)
インフレ抑制が最優先課題に
米国はトランプ政権以降、中国を敵視する戦略に切り換えており、中国からの輸入に高関税をかけている。米通商法301条に基づき、追加関税が4回に分けて発動され、3700億ドル(約48兆円)分について最大25%、関税が上乗せされた。発動前は数%の関税率だったので、輸入を行う米国企業から見ると、大幅なコスト増加要因である。
2020年1月に発足したバイデン政権も、基本的にトランプ政権の対中政策を継承しており、税率などで多少の変更はあったものの、事実上の貿易戦争が続いている。一連の措置は4年単位で見直しが行われるが、基本的に米国と中国の関係は変わっておらず、今後も関税措置が継続すると予想されていた。
ここに来てバイデン政権が見直しの可能性について言及したのは、11月に行われる中間選挙での苦戦が取り沙汰されているからである。