参院内閣委員会で答弁する岸田文雄首相(2022年4月28日、写真:つのだよしお/アフロ)

 岸田政権が国内物価の上昇を受けて「緊急対策」を発表した。ガソリンに対する補助金や低所得層を対象とした給付金など一時的な対策が中心だが、金融政策の変更という抜本的な対策を打てない以上、やむを得ない面がある。ただ、今後もインフレが進む可能性が高いという現実を考えると、企業の体質転換を促すための支援など、その場しのぎにならない支援策の拡充が求められる。(加谷 珪一:経済評論家)

対策は4つの項目で構成されている

 岸田文雄首相は2022年4月26日、記者会見を行い、物価高騰に対する「緊急対策」を発表した。対策は、(1)原油高対策、(2)エネルギー・原材料・食料の安定供給、(3)中小企業支援、(4)生活困窮者支援 の4項目で構成されている。

 これまで政府はガソリン価格の高騰に対応するため、石油元売り会社に対し、1リットルあたり25円の範囲で補助を行ってきた。新しい対策では補助額の上限を25円から35円に引き上げるとともに、35円を超えて価格が高騰した場合でも、超過分の半額を支援する。また、価格抑制の基準についても見直し、現行の1リットル当たり172円程度から、168円程度に引き下げる。

 ガソリン価格の高騰については、補助金分で価格を抑制するという手法だが、今後も価格高騰が続いた場合、その効果にも限界が生じてくる。この施策が意味あるものになるのかは、やはり原油価格の動向次第ということになるだろう。

 2番目の項目であるエネルギー・原材料・食料の安定供給は、あえて言えば恒久的な対策という位置付けになる。

 産油国に原油増産を働きかけるとともに、再生可能エネルギーを最大限導入し、必要に応じて原発の再稼働を検討する。加えて省エネ住宅の支援などを通じ、エネルギー消費の抑制を進めていく。日本は住宅の断熱性能が低く、ここで大きなエネルギーのロスが発生している。家屋の断熱化は、停電など非常事態への対策にもなるので一石二鳥だろう。