(武藤 正敏:元在韓国特命全権大使)
やはり韓国の次期大統領は、日韓関係の改善に本気で取り組むようだ。
尹錫悦(ユン・ソクヨル)次期大統領が、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の下で過去最悪となった日韓関係の立て直しに乗り出した。尹錫悦氏は、ウォールストリートジャーナル(WSJ)紙とのインタビューで「日本とも関係改善を目標」とすると発言するなど日韓関係を前向きに進める意欲を見せている。
その姿勢は大統領就任前からすでに行動に移された。尹錫悦次期大統領は、4月24日から28日にかけて、特使として政策協議団を日本へ派遣したのだ。こうした代表団を派遣するのは、米国に次いで日本が2番目だ。それ以外の国への派遣は今のところ発表されていない。それだけ日韓関係の改善を優先する姿勢を示していると見てよいだろう。
尹錫悦氏自身も、岸田文雄総理との電話会談、相星孝一駐韓大使との面談において、いずれも歴史問題より日韓関係の協力強化を力説している。これは、かつて文在寅氏が大統領就任の翌日、安倍晋三前総理との電話会談において「(韓日)感情上、慰安婦合意の受け入れは難しい」と述べたこととは正反対の動きである。
それを見ても、韓国の大統領交代で日韓関係は大きく動き出すことになりそうだ。
WSJのインタビューで示した尹錫悦氏の地政学的理解
尹氏はWSJ氏とのインタビューで韓国の東アジアにおける地政学的位置づけ、安全保障について次のように語っている。
「米国、中国と平和・共同繁栄・共存を実現させる方法があると考える」
「しかし我々が外交政策であいまいな姿勢を見せたり覆したりするように見えれば非常に危険になるかもしれない」
「バイデン米大統領との会談で両国の同盟強化について議論する」
「日本とも関係改善を目標にする」
日本との関係改善を世界に向けて公言したも同然だ。米国を訪問した政策協議団も、米国から日韓関係の改善を促される前に、日韓関係強化の意志を明らかにした。ただ、その際に、日本にも相応の努力が必要な点も強調したという。