「自殺」の判断、海外では2カ月を要することも
M 春馬さんは、2020年7月18日の昼頃、マネージャーによって自宅で発見されました。クローゼットの中で首を吊っていたと言われています。すぐに病院に搬送されましたが、14時10分に死亡が確認されました。そして、15時04分には、早くも日テレで、「自殺か」として第一報が報じられています。死亡確認から報道まで、わずか54分です。
7月19日の日刊スポーツには、18日に現場検証が行われたと書かれていました。つまり、この流れを見ると、検証もされていないのに「自殺」という死因だけが最初に決められてしまったことになります。
岩瀬 海外ではこんなに早く「自殺」と判断されることはまずありません。法医学の医師による遺体の解剖、薬毒物検査等の法医学的な検査は必ず行い、警察と協力しつつ現場や当事者のさまざまな状況と照らしながら検討を重ねていきます。オーストラリア(メルボルン)の法医学研究所にも視察に行きましたが、自殺かどうか判断するために日本にはない死因究明裁判を行うことがあり、結論が出るまで2カ月以上かかることもあるようです。
R 2カ月ですか……。解剖だけでなく、薬毒物検査も重要なのですね。
岩瀬 もちろんです。薬毒物の影響は外から見ただけではわかりません。「縊死」といっても、たとえば、薬を飲まされてからぶら下げられたケースもないとはいえないからです。
竹内結子さんの死、刑事部長出動で素早く「自殺」と判断?
M そういえば、2020年9月に竹内結子さんが亡くなった後、こんな記事が出ました。
『竹内結子さん 警視庁本庁も動いた「最速で自殺断定」の背景』
(https://www.news-postseven.com/archives/20201014_1604016.html?DETAIL)
この記事の中に、捜査関係者のコメントとして、「竹内さんは国民的な女優です。万が一経験の浅い警察官が“他殺の可能性も”などと言い出すと、大騒ぎになってしまうため、今回は所轄の渋谷署だけでなく、警視庁本庁にも連絡がいきました。捜査のトップといえる刑事部長自らが渋谷署に駆けつけ、徹底的な情報統制が敷かれた上で、素早く自殺だと断定されました。それだけ重大な事案だと判断されていたのです」とありました……。
岩瀬 「警視庁の刑事部長が渋谷署にかけつけた」ですって? 警視庁の刑事部長はいわゆるキャリア組なので、検視の経験はほとんどありません。そのような階級の高い人物が現場で指揮をしたらどうなるでしょうか。しかも、「徹底的な情報統制が敷かれたうえで、素早く自殺だと断定」というのにも不安を覚えます。逆に、重大な事案と判断されていたなら慎重に時間をかけて調べるべきでしょう。こうした記事を書いている記者もそのおかしさに気づいていないとしたら、それも大問題ですね。