日本の死因究明システム充実のために必要なこと

M 2020年4月に「死因究明等推進基本法」が施行されたにもかかわらず、実態は伴っていないようですね。

岩瀬 政府は死因究明を課題にしながら、法医学界に手を差し伸べず窮地に追い込んでいるという矛盾があります。実際に、法医学者の人員不足は深刻で、法医学の医師が1名しかいないという県が半分くらいあります。給料は安く、研究をしながら解剖実務をこなすのでかなり大変です。解剖を補助する人員の補充もありません。解剖実務に携わる執刀医、解剖補助、書記、検査技師などの人件費を、どの省庁が支払うのか全く不明確なためでもあります。政府はあえてその議論を避けているようですが、ポストを増やし、待遇もよければ、希望者はそれなりにいるはずなんですが。

 本当に現場は大変な状況なのですね。そもそも、法医学会をそれほどまで窮地に追いやっている責任はどこにあるのですか? 理想的な死因究明システムを日本に根付かせるためには、今、何が大切でしょうか。

岩瀬 責任は政治にあると思います。政治が動かなければだめです。死因究明の予算も全く足りていません。

 岩瀬教授のお話を伺い、死因究明は残された人達のためにこそ行われるべきなんだと思いました。春馬さんの件も死因をしっかり調べていれば、次なる自殺を防げたかもしれません。「こうすれば良かった」という後悔の念をなくしていきたいです。そして、この先さらに、同じ思いをされたご遺族たちともつながりを深め、私たちでできることをしていきたいと強く感じました。

岩瀬 ぜひ頑張ってください。

M・R ありがとうございました。