副業のスポットコンサルは田舎の社長の話し相手だった

 会社から足を洗いたいKさんは転職活動だけでなく、副業も始めている。副業マッチングサイトなどを利用した単発の仕事を、数回やってみたという。

 副業マッチングサイトは、発注側の企業が単発のプロジェクトに参加してくれる人をネット上で募集するプラットフォームだ。スキルを持った人が応募し、短期間プロジェクトに参加する。こうしたマッチングサイトは、ネット上にあふれている。

 Kさんはこれまでに数件、副業マッチングサイトを通じて、スポットコンサルを引き受けた。

 スポットコンサルとは、経営、人事、営業、マーケティングなど専門的なビジネスコンサルティングを、1時間程度の短時間で提供するものだ。コンサルタント料として1回につき数万円の報酬が支払われることが多い。

 隙間時間にできてお手軽、しかも自分の専門知識を生かせるとあって、おじさんたちの憧れの副業だ。だが、高報酬の案件には応募者が殺到するため、仕事が取れる確率は低い。

 Kさんはこれまでに、10件以上のスポットコンサルに応募したが、採用されたのは4件だけだった。クライアントはいずれも中小企業で、中には20人程度の小規模な会社もあった。

 そのうちの、とある中小の食品会社からの依頼は、「機能性食品を売りたいので、デジタルマーケティングについてコンサルして欲しい」というものだった。クライアント会社のスタッフ数名とビデオ通話で1時間ほど話した。

「コンサルと言っても、自分じゃなくても話せるようなことばかり。デジタルマーケティングの知識は一応あるけれど、今のビジネスパーソンにとっては常識で、ただ教科書にあるようなことを話しただけ。私は専門の海外ビジネスをコンサルしたいけど、そういう仕事は他の人に取られちゃって決まらないの」

 ある地方の中小企業の社長からコンサルを頼まれた時は、こんなことを言われた。

「○○(Kさんの企業名)のような大企業の方とお話ししてみたかったから、マッチングサイトを利用しました!地方にいるとそういう方とお話しできる機会がないので」

 この社長とのビデオ通話は、単なる世間話で終わった。