ポスティングは1枚1〜5円にしかならないが……(写真:アフロ)

「あれ、こんなところでおじさんが働いてる……」

 近年、非正規労働の現場で、しばしば「おじさん」を見かける。しかも、いわゆるホワイトカラーの会社員が、派遣やアルバイトをしているケースが目につくようになった。

 45歳定年制、ジョブ型雇用、そしてコロナ──。中高年男性を取り巻く雇用状況が厳しさを増す中、副業を始めるおじさんたちの、逞しくもどこか悲壮感の漂う姿をレポートする。

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(若月 澪子:フリーライター)

ポスティングの報酬は1枚1円

 ネット広告需要の高まりと反比例するように、新聞や雑誌など紙媒体の凋落は、もはや誰にも止められない。

 その一方で、「紙のチラシ」というアナログな広告を、各家庭に配布するポスティング業界は、じわじわと売り上げを伸ばしている。「2021年 日本の広告費」という調査レポートによれば、ポスティング市場は1283億円(前年比111.0%)と、事業規模が拡大しているのだ。

 かつてチラシは新聞に挟まっていた。しかし、今や新聞を取っている人の割合は全体の6割、もっとシビアなデータでは、人口の3割しか読んでないと言う専門家もいる。

 パーソナライズされたネット広告と違い、不特定多数の目に触れる紙の広告は、まだまだ宣伝媒体として重要な位置を占めている。そのチラシを、新聞の代わりに配布しているのがポスティングである。

 ただ、現場で配布を行うポスティングスタッフの報酬は、驚くほど安い。報酬単価はチラシ1枚あたり1~5円程度(首都圏の場合)。100枚配っても、100~500円にしかならない。

 東京近郊に住むJさん(50代)は、会社員のかたわらポスティングの副業をしている。彼はポスティングで月に6~8万円ほど稼いでいるというが、そのためにかなり過酷な労働を強いられている。