使えないおじさんは「安く使えるおじさん」に

 次第に慣れてくると効率よく配れるようになり、配布枚数も増え、1週間に2000部を担当するようになった。

「それでも1カ月に稼げるのは8000円。でも、ポスティングはやればやるほど収入が入りますし、確実に稼ぐにはこれを続けるしかないと思いました」

 Jさんのような50代のサラリーマンの副業は、最終的に肉体労働のバイトに落ち着く場合が多い。彼らはたいてい、一度も転職経験がない勤続30年以上という人か、転職経験があっても同じ業界しか知らない人だ。

 今でも銀行の与信審査では、勤続年数が長い方が有利だし、かつては同じ会社に最後まで勤め上げることが美徳とされてきた。しかし人生100年時代には、おじさんもアップデートしないと生き残れない。

「使えないおじさん」は、「安く使えるおじさん」になるしかないのだ。

 ポスティングを始めて1年ほど経ったころ、ポスティング中にライバルの不動産会社から、「単価を1.5倍にするから、ウチで働かないか」とスカウトされた。Jさんは、すぐにそちらに乗り換える。

 さらにコロナ禍に入り、リモートワークで出社が週1回になったので、追加で2社のポスティング会社の仕事も受けはじめた。現在は、外食のチラシやフリーペーパーなど、1週間でおよそ5000部~1万5000部を配っている。報酬単価はチラシによって異なるそうだ。

「質の悪そうな紙を使っているところは、単価が1枚0.75円と激安。それが自民党の国会議員のパンフレットなどは2.5~3.5円とおいしいんです。選挙前の時期はそういう仕事が入る。政党のチラシは紙の質も良くて、お金をかけている印象です」

 マンションや団地は配りやすい。タワー型マンションは300~400戸入っているので、一気にさばくことができる。今ではJさんは300戸の配布を、およそ30分で終わらせているという。

「ご近所さんに見られることもあるかもしれませんが、気にしていたらやっていられない。開き直ってやっています」

 平日は朝4時に起きて5時から1時間半ほど配布。土日は朝昼晩と、3回くらい出動している。こうして月に6~8万円まで稼げるようになった。

「労働時間と比べると、見合っていると思いません。しかし、本業とかけもちできる仕事というと、経験から言ってこれが一番マシということになります」