※写真はイメージ(写真AC)

医療費削減を狙って普及が進むジェネリック医薬品(後発医薬品、先発医薬品の特許が切れたあとに販売される低価格な同等品)で、異変が起きている。いくつかの薬が処方箋通りに提供できないのだ。いま調剤薬局で起きている混乱ぶりを、現場の薬剤師が報告する。(JBpress)

(桜森奏人:薬剤師、調剤薬局薬局長)

 FAXの受信音が響き、カタカタとプリントアウトされていく。内容は見なくてもわかる。さっきオンライン発注した薬が欠品するという連絡だろう。

 この調剤薬局で発注業務を中心的に行っている事務の漆原さんが、出力されたA4用紙を手に取り憤慨した様子で私に近づいてくる。

「桜森さん! またビソプロロールが欠品です。全部の卸さんをあたりましたが、どこにも在庫ありません。先発(医薬品)のメインテートもないらしいんです。どうします? 来週いらっしゃる患者さんの薬が足りません!」

発注した薬の欠品を知らせるFAX

 こんなやりとりは、もう何度目だろう。当たり前に発注して、当たり前のように納品があった、そんな「当たり前」が遠い昔のように思えてくる。

薬の仕入れ業務が機能していない

 私が勤務するのは、全スタッフ4人、グループ全体の薬局が数店舗という小さな調剤薬局だ。

 調剤薬局では、処方箋に基づき用意した薬を患者さんに説明してお渡しする。ちゃんと服用できているか、他の薬との飲み合わせはどうか、効果は出ているか、副作用はないか…という患者さんのサポートは薬剤師にとって大事な業務である。そのほか、処方箋に書かれた医薬品名や用量に疑問があれば、処方した医師に問い合わせることもある。

 患者さんに薬を出すためには、薬の仕入れが必要だ。薬を扱う専門の卸に発注し、納品してもらう。地域や卸との取り決めによっても違うが、だいたいは1日1~2回、卸の配送担当者が発注書に従った薬を薬局に届けてくれる。

 午前中に発注した薬は午後に納品されるが、近隣の倉庫に在庫がない場合はセンターからの取り寄せとなり、納品が半日から1日程度遅れる。通常はオンラインを利用しての発注だが、急ぎの場合は直接電話をして納品時期を確認する…といった作業が毎日発生する。

 このルーチンワークの仕組みがいまはちゃんと機能していない。なぜそんなことになったのか、発端は2020年12月に発覚した小林化工の事件だった。