帰国すれば命の保証はないのに日本で認められない難民申請

 まだ幼い弟は同級生から「何人か」と聞かれて答えることができず、「宇宙人だ」と答えて、うそつき扱いされてしまう。クルドという国はない。クルドってどんなところなのだろう。弟は想像もつかない。父から「生まれたところにはたくさん、石があったんだよ。石はクルドも変わらない」と聞いた弟は石を拾い集める。

©︎2022「マイスモールランド」製作委員会 
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 サーリャもまた、小学生の頃から、友だちには「ドイツ人」と自分の出自を偽り続けていた。唯一、コンビニのバイト仲間である東京の高校生、聡太だけに自分がクルド人であるということを打ち明け、彼の態度が変わらなかったことにほっとする。

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 ぎりぎりでも家族四人、幸せに暮らしていた彼らに試練が訪れる。難民申請が通らず、在留資格を取り上げられたのだ。仮放免となった彼らは働くことが禁じられ、健康保険証もなく、住んでいる県の外には出るには入管に申請して、許可を得なければならない。

 家が軍に焼かれ、デモに参加したら、刑務所に入れられ、拷問を受けた。国に帰れば、確実に逮捕され、命の保証はない。父親は「自分のどこが難民と認められないのか」と声を震わせ、訴える。だが、入国管理局の職員は義務的に受け流すだけだ。

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 生活費のために危険を冒して働いていた父親はついに入管に収容される。一度、中に入ってしまうといつ出られるかわからない。何年も入ったままの人もいる。サーリャたちは子どもたちだけで生きていかなければならなかった。