ワム!のジョージ・マイケル(右)とアンドリュー・リッジリー=1985年_天安門広場(A PROTOCOL MEDIA PRODUCTION ©2022)
今年も街中で流れているワム!の「ラスト・クリスマス」。クリスマスソングの定番だが、皮肉なことにジョージ・マイケルは2016年12月25日、クリスマスに亡くなっている。
『ジョージ・マイケル 栄光の輝きと心の闇』はワム!のマネジャーだったサイモン・ネイピア=ベルが監督したドキュメンタリー。スティーヴィー・ワンダーをはじめとした40人以上の関係者にインタビューを行い、ジョージ自身の未公開映像や写真を多数使用。華やかなポップスターの栄光の裏に隠された孤独と苦悩に満ちた人生が浮き彫りになる。
LGBTQへの理解が足りなかった時代に彼がどんなハラスメントを受け、どれほど傷ついていたのか。当時の貴重な映像は衝撃の連続。エモいばかりではなかった80、90年代の荒っぽさを改めて考える。
大ヒットを飛ばしているのに印税はゼロ
ジョージ・マイケルの本名はイェオルイオス・キリアコス・パナイオトゥ。ギリシャ系キプロス人の父とユダヤ人の血を引くイギリス人の母の間に生まれた彼は子どもの頃からスターになることを夢見るが、シャイで誰にも打ち明けられず、自分の中に「ジョージ・マイケル」という最高の友人で理想の男性像である別人格を作り上げる。
1981年、12歳の時からの友人、アンドリュー・リッジリーとワム!を結成。ティーンの男の子たちのキラキラしたルックス、甘い歌声と楽しいダンス、ジョージの溢れ出る音楽的才能もあり、あっという間に世界から愛される存在になっていく。
ジョージ・マイケル(左)とアンドリュー・リッジリーが結成したワム!(A PROTOCOL MEDIA PRODUCTION ©2022)
ところが曲が大ヒットしながら、1円も印税が入らない。不当な契約を解約するため、訴訟費用を得ようとツアーをすると各地で大旋風を巻き起こし、結果的にさらに大きな契約にこぎつける。ジョージ・マイケルは見かけによらず、相当な切れ者で、確固たるビジョンのもと、事を成し遂げる強い信念を持っていた。


