普通の17歳。周りと違っているのはクルド人だということ。日本で育った彼女にコンビニの客が言う。

「とても言葉がお上手。外人さんとは思えない。いつかお国へ帰るんでしょう?」

 何気ない言葉が彼女を傷つける。帰る国はなく、思い入れも思い出もない。いったい、どこに行けというのか。彼女ははっきり答える。

「ずっとここにいたいと思います」

クルドの誇りは失わない

 彼女が親に内緒でバイトしていたのは負担になりたくなかったからだ。日本では難民としてほとんど認定されないクルドの人々。以前、ドキュメンタリー『東京クルド』でも紹介したが、多くの人が就職、進学といった普通の暮らしをあきらめ、不安定な立場で生活している。埼玉県には2000人ほどのコミュニティが存在していて、日本で生まれた者もいる。

 サーリャ一家はクルドからやってきた父親に従って、家のなかではクルドの祈りを捧げ、クルド料理を食べ、「クルド人としての誇りを失わないように」と言い聞かせられている。

©︎2022「マイスモールランド」製作委員会 
拡大画像表示

 だが、幼い頃に連れてこられて以来、ずっと日本で暮らしているサーリャと妹、弟は普段は日本語で会話し、日本人のようにラーメンをすすって食べ、日本の文化に親しんでいる。

©︎2022「マイスモールランド」製作委員会 
拡大画像表示