ところが聡太の身を案じる彼の母親の告げ口で、コンビニのバイトはクビ。ビザがなければ大学は受験できても、入学できない。教師になるというサーリャの目標も失われつつあった。

©︎2022「マイスモールランド」製作委員会 
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耳から離れない「ずっとここにいたいです」の言葉

 親は子を思うもの。聡太の母が苦渋の決断をしたようにサーリャの父もまた、子どもたちのために大きな犠牲を払おうとしていた。そこに日本人、クルド人の差はない。

 彼らは特別なことを求めただろうか。むしろ普通に暮らしたいと願っている。「クルド人だから。日本人じゃないから」と意識することなく、なんの不安を感じず、働いたり、学んだり、病気やけがをしたら、病院に行きたい。

 マイスモールランドとはサーリャの心のなかにある、どこでもないみんなが幸せに暮らせる小さな理想郷を意味するのだろう。私にはこの国の狭量さを指す言葉だと思わずにいられない。なんて小さな国なのかと。

 つい先日、コロナ渦のせいだと思いたいが、混雑するバスのなかで、外国人らしい外見の人に「帰ればいいのに」と悪態をついている人がいて、ショックを受けた。その人の国はどこなのだろう。もしかしたら彼の心にある国は日本かもしれない。

「ずっとここにいたいです」。サーリャの言葉が耳から離れない。国を追われ、帰りたくても帰れずに日本にやってきた人々、そして、これからやってくる人々。帰るか、帰らないかは彼らが決めること。決して、彼らの居場所が再び、奪われるようなことがあってはならない。

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『マイスモールランド』

5月6日(金)新宿ピカデリーほか全国公開

出演:嵐莉菜、奥平大兼、平泉成、藤井隆、池脇千鶴、アラシ・カーフィザデー リリ・カーフィザデー リオン・カーフィザデー、韓英恵、サヘル・ローズほか
監督・脚本:川和田恵真  
主題歌:ROTH BART BARON 「N e w M o r n i n g」

企画:分福  制作プロダクション:AOI Pro. 

共同制作:NHK  FILM-IN-EVOLUTION(日仏共同制作)
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(映画創造活動支援事業)独立行政法人日本芸術文化振興会

製作:「マイスモールランド」製作委員会   
配給:バンダイナムコアーツ   
©︎2022「マイスモールランド」製作委員会 

公式HP mysmallland.jp
公式twitter @mysmallland