ガサドン

 ガサドンとは、ウルトラマンに出てくる怪獣の名前……ではなく、狩猟時に藪や林で「ガサッ」と鳴ったからターゲットの確認もせずに「ドン」と撃つことをいう。誤射が起こる典型的な事例として「ガサドン」は使われている。

 私から言わせれば、ターゲットを確認せずに発砲するなどありえないし、「目視もしてないのになんで当たるねん?」というところだ。ガサドンで誰かを殺傷したら、やはり「業務上過失致死・致傷」となる。

 なぜガサドンが起こるのか。慎重さが足りない。小心者である(獣が怖い)。銃を使うことに対する謙虚さがない。脊髄反射の短慮者である。経験が少ない。目が悪い。要するにアホである……などなど考えられるが、銃を使う者としてはどれもまったく話にならない幼稚さが、ガサドンを引き起こしている。

 当局職員の方が犠牲になった理由――先ほどの北海道森林管理局長名で猟友会に出されたステートメントによると、当該職員は倒木を片付けるために「発砲が禁止されている林道(公道)上を歩行していたにもかかわらず」撃たれたとのことだから、ガサドンではない。狙って撃ったと推測される。

 ただし、長距離の射撃ができるライフルではなく、短距離射撃のショットガン(散弾銃)でもなく、ハーフライフル銃を使用している。距離は130mだった。大口径ライフル競技の公式大会で優勝経験のある金玉堂総裁(3月12日付記事参照:https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/69114)こと鎌田正平氏によると、「ハーフライフルで130mはなかなかの腕前」とのこと。そのような腕を持つと思われるにも関わらず、当該ハンターは、白いタオルがエゾ鹿の尻尾に見えたと説明したそうだが、犠牲になった職員の方は「赤色のジャンパー、オレンジ色のヘルメットを着用し、狩猟者から見て十分目立つ格好の安全対策を講じたうえで」作業していたとされるので、その姿をエゾ鹿と誤認したとは考えにくい。さらにスコープを覗かずに撃ったという説も一部にあるが、本当に130mをスコープなしで命中させたのだとしたら超人技である。

 筆者にとっては理解しがたい点がいくつも残る事故だった。