エゾ鹿のロースト ベリーソース添え

 ミートハンターをご存知だろうか。おそらく和製英語で一般には聞きなれない言葉だと思う。

 ハンターとして身を立てたいと考えた場合、ジビエを総合的に扱う会社のお抱えハンター、ハンターを案内するハンティングガイド、そしてミートハンターという道がある。

【前回まではこちら】
・女性戦場カメラマンと呼ばれた私が「エゾ鹿撃ち」になった理由(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/69113
・初体験なのに猟に出てみたら疼く本能、「やっぱりヒトの先祖は狩猟民族だ」(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/69114
・エゾ鹿を探しに入った山中で胸まで雪に埋もれながら遭遇した「森の神」(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/69323

ミートハンターの収支

 ミートハンターとは、簡単に言うと狩猟をして得た新鮮なエゾ鹿を、専用の処理施設に丸ごと持ち込み報酬を受け取るというものだ。施設によって買取価格は異なるようだが、現在は凄腕のハンティングガイドとして活躍する“師匠”がミートハンターをやっていた頃は1頭あたり1万円、現在は1万2000~1万3000円といったところだそうだ。1頭1万円だと、一日あたりどれくらい獲れば生計を立てられるのだろうか。経費だけでも、

・ガソリン代(一日走れば1万円近く?)
・車の維持費
・弾代(非鉛の弾を使うため、自作しない場合一発1000円以上)
・地元でなければ宿代

 などと結構な額になるはずで、3頭くらいキレイな状態で仕留めてやっと息がつける、儲けを出すには5~6頭必要だろう。「キレイな状態で仕留める」というのは、ヘッドやネックを撃って傷を最小限に抑えるようにすることだ。まあ、傷というか可食部分の最大化ということなのだが。

ネック撃ち。肩口近くの頸を撃ち抜いたため即死、苦しませずに獲ることは鹿のためにも肉のためにも至上命題(筆者撮影)
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 ビタッと照準を合わせたスワロフスキーなどの高価かつ高倍率のスコープ(私のスコープは師匠から譲り受けたツァイスのもの。これもすばらしい仕事をする)で、遠くに佇む静止状態の鹿を的確なフォームをもって引き金を引くことができれば大体は間違いないのだが、そういうシチュエーションばかりとは限らない(あっ、ちなみにスワロフスキー言うたらキラキラ光るアクセサリーブランドが有名ですが、そのグループ会社のスワロフスキー・オプティックが高性能スコープを作っとります。スコープやからキラキラしてまへんけど、値段は20万円くらいからやからクラクラしまっせ)。

 その上獲物に出会えず獲れない日もある上、猟期は最大で秋から冬の終わりまでの半年間であり、ミートハンター一本で「身を立てる」というのは難しく、実際には兼業やトリプルワークとなる場合が多い。