肉の管理

 羊や鹿の肉が臭い、と思っている人がほとんどだと思うが、つぶしたての肉はまったく臭くない。もし解体して時間が経過したとしても、スーパーで売られている肉と同じように適正に処理されれば大してにおわない。

 肉の表面に出たドリップをきちんと拭くなり吸収させるなりし、空気にさらす時間を限りなく減らし、酸化を抑えれば何の問題もない。そもそもなぜ肉が臭くなるのかというと、肉の表面に滲み出た血液や体液が酸化して腐敗臭を放つからだ。つまり身近なところでいえば、汗をかいてタオルで拭きとりもせず時間が経って臭くなる原理と同じ。空気に触れさせなければいいので、巷で売られている真空パックするための機械を使うのが一番良いだろう。不織布タイプのキッチンペーパーでくるみ、真空パックを施し、冷蔵する。

 すぐに食べる予定がないならそれを冷凍しておけば数年経ってもほぼ劣化しないことは確認済みだ。真空パックが良いのは冷凍焼けがないことで、長期間冷凍しても変なにおいが出ない。マイナス30℃以下になるフリーザーを使えばなお良い。

サドルと呼ばれる一番の高級部位「背ロース」部分(筆者撮影)

 撃った後回収して現場ですぐに内臓を出し逆さに吊るしたとしても、解体して骨から外した大まかな肉の塊の状態からは、驚くほど血が滲んでくる。ペーパーがしっとり赤く染まり、何度か交換する必要があり、真空パックができない場合、冷蔵状態ではこれをこまめにやって「肉を育てる」ことで最後まで美味しく食べることができる。

 日本のスーパーで売ってるようなセコい肉片では、こういうことをやる前に食べ終わってしまうので一般からの同意は得にくいと思うが、コストコなどで大きな塊肉を購入した場合は応用できるはずだ。

 ただ、不織布の厚めのキッチンペーパーは少しコストが嵩むので、衛生面で特に気にしない場合はペットシーツが便利だ。どうせ加熱するし、調理する前に表面をサッと洗うので、私も数年前まで使っていた。おすそ分けの機会やイベントで調理することが多くなったのもあって使うことはなくなったが、自分だけのために肉を処理するとしたらまた使うだろう。液体を非常に効率よく吸う上、後戻りがないので本当に便利だ(あ、真似する場合は自己責任でお願いしますね)。