ミートハンターの日常
ミートハンターの日常は結構ハードだ。獲っては処理場に持ち込み、すぐ山に戻りの繰り返し。その活動は早朝未明から始まる。
少しでも黒字を出そうと思えば夜明け前にポジショニングが必要だ。鹿が水を飲みに沢に現れるところを狙うのが確実で、そこでまず2頭ほど獲れれば上々、すぐに処理場へ持ち込む。その後はまた山に入って撃っては持ち込みを繰り返す。最後は日没前に再び沢におりてくる鹿を狙い、一日が終わる。走行距離は数百キロに及ぶことが少なくない。
師匠の車の助手席に乗って林道を流していれば鹿を見ない日はほぼない。師匠がいとも簡単そうに鹿を見つけることができるのは、日頃のたゆまぬ努力の賜物である。ただボーッと可猟範囲である地域を流していても効率よく見つけることはできない。今や「伝説のガイド」の彼は、猟期中お客さんから「確実に獲物を見つけて獲らせてくれるガイド」として引っ張りだこだ。何しろ、「脳にエゾ鹿センサーが内蔵されているのでは?」と思うくらい鹿を見つけてくれる。狩猟シーズン外の下見と経験の積み重ね、鹿がどのように移動しているかなどの想像力がものを言う。
撃てる場所にいる鹿を見つけ、確実に仕留めなければミートハンターは成り立たない。鹿がいたからと後先考えずに撃って、回収に時間がかかっていたのでは話にならないので、撃つ撃たないの判断も早くできるようになる。ミートハンターをやった過去の経験が基礎になっているとまでは言わないが、今の師匠の血肉として蓄えられているのは間違いない。師匠は60代後半だが、その動作は40代で通じる。「若い頃に比べたら全然動けなくなってるなぁー」と師匠は言うが、今の40代のオッサンでも師匠に勝てるかどうか甚だ疑問だ。
私はとてもじゃないがミートハンターにはなれないので、いつ頃からか狩猟を続けるならエゾ鹿の利用価値を高める方向で関わっていきたい、と思うようになった。具体的には狩猟のことを伝え、エゾ鹿の美味しさ、高タンパク低カロリーの良さを体験してもらい、ジビエを食べる人が少しでも増えればいいと思っている。何が正しくて何が正しくないのか、そんな判断はできないが、これ(大自然の中で狩りをするということ)は循環であると感じている。