食事中にハンターに気付いたエゾ鹿。こちらを凝視しつつも口は動いている(筆者撮影)

 射撃を始めて間もないころ、仲間と狩猟に出かけたときのこと。車で林道を進んだ後、それぞれが徒歩で散らばって山に入ったことがあった。

 狩猟のスタイルはいくつかあって、大人数で行う「巻狩(まきがり)」、一人で行う「忍び猟」、車両を用いる「流し猟」などがある。我々は基本的に「流し猟」を行っているのだが、この時は忍び猟風に歩いてみた。

【前々回記事】女性戦場カメラマンと呼ばれた私が「エゾ鹿撃ち」になった理由(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/69113

【前回記事】初体験なのに猟に出てみたら疼く本能、「やっぱりヒトの先祖は狩猟民族だ」(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/69114

「森の神」と出会う

 山には車で走ることのできる林道があって、当然ながらそれ以外の場所はとても歩きづらい。ましてや猟期の内の12月からは積雪で、雪の状態によって滑ったりはまったりしてまっすぐに進むことさえままならない。高校生時代までは野外活動を行う団体に所属していたので道なき山中を歩くことは初めてではなかったものの、ごっちゃり積もった雪のことは正直言って舐めていた。新潟などで豪雪になったときの取材は何度か経験があったので、〈まあ何とかなるやろ~〉と思っていたが、実際は何ともならなかった。

(私が猟に行く釧路はそんなに雪が多くないという触れ込みだったが、もちろん毎年同じではなく、降る時はきっちり降る。どれくらい降るかというと、温泉の駐車場から入り口に歩いて向かうまでに、10cm先が見えない吹雪で遭難しそうになったこともあるくらいだ。除雪してあるのにあっという間に雪が積もって入り口のドアがなかなか開けられなかった)

(筆者撮影)