プーチン大統領(写真:代表撮影/AP/アフロ)

(作家・ジャーナリスト:青沼 陽一郎)

 ロシア軍がチョルノービリ(チェルノブイリ)原子力発電所から撤退した。ウクライナの原子力発電公社、エネルゴアトム社が3月31日に発表したとして、複数のメディアが伝えている。

 1986年に原子炉の爆発事故を起こしたチョルノービリ原発は、2月24日のロシア軍の侵攻直後に占拠されていた。

 海外メディアが報じたところでは、原発職員の話として、ロシア軍は放射性物質の汚染が著しい「赤い森」を防護服なしで通り、装甲車が汚染土壌の粉塵を巻き上げていたという。

 さらにはエネルゴアトム社の話として、「赤い森」に塹壕や要塞を築いていたともされる。それでロシア軍は大量の放射線を浴び、身体異常の兆候にパニックになって、内部で暴動や反乱の動きもでていた、というのだ。

伐採され埋められた「赤い森」

「赤い森」については、ウクライナのゼレンスキー大統領が日本の国会で行った演説の中で危機を示唆したものとして、1週間前の配信で触れている(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/69467)。

 1986年の原子炉の爆発直後に飛散した放射性物質が、風向きによって一気に流れ込んだ森の木々が一瞬にして枯れ果て、真っ赤になってしまったことから「赤い森」と呼ばれる。

 しかし、いまはその景色を見ることはできない。赤く染まった木々は全て伐採され、その土地の中に埋め込んでしまった。それがかえって汚染被害を深刻なものにさせたと指摘される。