(山田敏弘・国際ジャーナリスト)
3月25日、北朝鮮の朝鮮中央テレビが、前日に行われた新型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射について国民に向けてニュース番組で報じた。
欧米メディアは、ICBMの発射そのものに加えて、ニュース映像に登場する金正恩委員長の姿にも注目した。ミサイル格納庫の巨大な扉が開くと同時に、黒い革ジャンにサングラス姿で、両サイドに軍の幹部を従え、颯爽と登場するのだ。
ハリウッド風に「進化」した北朝鮮のニュース映像
そこから移動式発射台に載せられたミサイルが格納庫から姿を現し、実際に発射されるまでの映像も、巧みな演出とカメラワークによって、まるで映画のような作りになっている。仏AFP通信は、その映像を「北朝鮮のハリウッド風ミサイル発射映像」と報じたほどだ。実際、これまでの北朝鮮のニュースとは一線を画すもので、まさにハリウッド映画風の仕上がりになっている。
同時にAFP通信の同記事は、金正恩のいで立ちにも触れている。韓国人識者による「クエンティン・タランティーノ監督の犯罪映画『レザボア・ドッグス』や、韓国のギャング映画『新しき世界』を連想させる」という本気か冗談かわからないようなコメントを掲載しているのだ。日本のミドル層以上向けなら、『Gメン75』の丹波哲郎や『西部警察』の渡哲也風と説明した方が分かりやすいか。登場シーンからしてなんともドラマチックなのだ。
まだご覧になっていない読者の方は、筆者のYouTubeチャンネル「スパイチャンネル」でも紹介しているので、ぜひ実際の映像を見ていただきたい(https://bit.ly/35yZyEH)。
こんなふうにミサイル発射の一件を紹介すると、今回のICBM発射自体があたかもパロディ映画のように思われてしまうかもしれないが、金正恩にとっては国内的にも対外的にも、極めて重要な成果をもたらしてくれた。