原発を占拠したロシア軍の中には、1986年の爆発事故について聞いたことがないという兵士もいたという。現段階では真偽は不明だが、ウクライナ当局者がSNSで発信したところによれば、急性放射線障害を発症した兵士たちが、バス7台でベラルーシの医療施設に送られたという。

 旧ソビエト連邦時代に起きた原発事故で、モスクワは酷く汚染された周辺の森や、それに現在の立ち入り制限区域内の94カ所に及ぶ村や町を破壊し、地中に埋めるように指示した。それが土壌汚染を深刻にしたはずなのに、こんどはモスクワの指示で侵攻したロシア軍が自滅したのだとすれば、因果というよりも、間の抜けた話だ。

 ただし、米国防総省のカービー報道官は31日の記者会見で、チョルノービリ原発からのロシア軍の一部撤退を認めた上で、「(放射能による)健康上の危険があるためではない」としている。首都キーウ(キエフ)を含むウクライナ北部で侵攻作戦が失敗して、軍の態勢を整え、東部戦線に作戦の重心を移す流れの一環だとの見方を示している。

孤立する権力者ほど怖いものはない

 その米国のバイデン政権は、プーチン大統領にウクライナの戦況や欧米の経済制裁による自国への影響について、誤った情報が伝わっている、との分析を公表した。

 ホワイトハウスのベディングフィールド広報部長が30日の記者会見で明らかにし、「プーチン大統領が軍に惑わされたと感じ、軍指導部との摩擦につながっているという情報を入手している」と語った。正確な情報が上がっていない理由については、プーチンの側近が「怖くて真実を話せないからだ」としている。

 また、米国政府高官によると、プーチンは「ウクライナに徴兵された兵士が派遣されていると知らなかった」とも伝えられる。

 さらに31日には、バイデン大統領がプーチンについて「側近を更迭したり、自宅軟禁下に置いたりしていることを示唆する情報がある」と記者団に語り、「外部との接触を避けているようだ」「自ら孤立化しているようだ」との見解を示した。