頼盛は「卑怯者」だったのか?

 重要幹部でありながら平家の都落ちに同行せず、最後は源氏に与して生き延びた頼盛について、軍記物語などでは卑怯者のように描かれることが少なくありません。

 ただ都落ちに同行しなかったことに関しては、前述の通り、頼盛の方が先に置いてきぼりを食らっているという経緯があります。そのため頼盛が平氏と袂を分かち、源氏に与して生き残ったことも、同時代の人間からはあまり批判されておらず、むしろ同情的に見られていたようです。

 筆者の頼盛に対する印象を述べると、若い頃に兄・清盛から疎んじられていたためか、平家、朝廷とは常に一定の距離間を保つよう意識していた節が感じられます。結果的にそうした姿勢から、頼朝との誼(よしみ)も結べ、平家の滅亡にも巻き込まれず、無事天寿を全うするに至れたのではないでしょうか。

 それにしても一族の滅亡を見届けた晩年の心中はどのようなものだったのか。内心では複雑な思いもあったのではないかと偲ばれます。