プーチンが今回、ウクライナに侵攻した理由には、このKGB時代の思想が色濃く影響していると言えるだろう。

情報機関の支持を失いつつあるプーチン

 報道によれば、ウクライナ侵攻後、FSB(連邦保安局)で外国の諜報活動を担う部門のトップ、セルゲイ・ベセダが自宅軟禁された模様だ。プーチンはFSBの第5局に対する弾圧を始めたとも言われている。

 第5局は侵攻に先立ち、ウクライナの政治情勢を報告する任務にあったが、プーチンを怒らせることを恐れて、ウクライナ軍の士気、ゼレンスキー政権の統率力、民衆の支持状況などについて、耳ざわりの良いことだけを報告していたようだ。こうしたことは、情報機関にとって、本来タブーとも言える行為だ。

 また、FSBの「内部告発」とされる文書がインターネット上に流出し、「勝利の選択肢はなく、敗北のみだ。仮にウクライナを占領したとしても、統治に50万人以上の要員が必要だと指摘し、前世紀初めを100%繰り返しているとして、日露戦争の敗北にもなぞらえた」とされる。

 ウクライナの国家安全保障・国防会議のオレクシー・ダニロフ書記が明かしたところでは、 「チェチェンのカディロフツィ(チェチェンを事実上統治する準軍事組織)が、ゼレンスキー大統領を暗殺する特別作戦を行っていることを我々は分かっている。というのも、今回の血なまぐさい戦争に参加したくないFSBの内部から情報を受け取っているからだ。そのおかげでカディロフツィの特殊部隊を破壊できている」とFSBから内通があることを暴露した。

 さらに、侵攻3日前の2月21日の安全保障会議で、「SVR」(ロシア対外情報庁)長官ナルイシキンが、ウクライナ東部の独立承認を求めるプーチン氏への返答に窮する場面がテレビで放映された。