戦火が広がるウクライナからルーマニアに逃れた避難民(写真:ロイター/アフロ)

(山中 俊之:著述家/芸術文化観光専門職大学教授)

 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によれば、ロシアのウクライナ侵攻によって生じた周辺国等への避難民の数は400万人、国内で支援を必要とする人は1200万人にも上る。欧州で、第二次大戦後最大の人道危機が発生している。

 ロシアによる今回の侵攻は、第一次大戦後国際社会が築き上げてきた侵略戦争の違法化という国際秩序に真っ向から挑戦するものであり決して許されるものではない。また、ウクライナ避難民に対してできる限りの支援をすべきであると思う(私も支援のためUNHCRに対して寄付をした)。

 しかし、同時に世界に支援を必要としている避難民や難民は決してウクライナ人だけではないことにも注意が必要だ。

 避難民・難民の扱いを見ると、「白人、キリスト教徒」と「非白人、非キリスト教徒」で扱いが違う二重の基準が存在する。メディアには登場しにくい潜在的な避難民も多い。

 このような二重の基準や潜在的避難民問題を解決し、後述する大量移住時代に備えた全世界的な避難民・難民への対応・支援の必要性と方策について述べることにしたい。

 なお、本稿では短期的に自国から避難している人々を避難民、各国政府から認定を受けた人々を難民として一応区別しているが、実際には重複して用いられていることも多い。

避難民に対する二重の基準

 3月14日の米ニューヨーク・タイムズの1面に、歓迎される難民と歓迎されない難民(2 refugees, only one is welcome)との見出しで大きな記事が掲載されている。

【参考記事】
Two Refugees, Both on Poland’s Border. But Worlds Apart(https://www.nytimes.com/2022/03/14/world/europe/ukraine-refugees-poland-belarus.html)

 ポーランドにおいて、ウクライナ人の避難民は宿泊や食事といった支援を受けられるが、同じウクライナからの避難民でもスーダン人の場合は監視下に置かれ、同様のサービスを受けることができない内容の記事である。

 人種や宗教によって同じ避難民であっても扱いが違う点を写真入りの大きな記事で告発している。世界で起きている問題点を抉り出すニューヨーク・タイムズの真骨頂と言える記事だろう。世界でフェイクニュースが問題視される状況下で、ニューヨーク・タイムズの読者数がうなぎのぼりで増えているのもうなずける。

 世界に目を向けると、シリア内戦によるシリアからの難民は660万人、長く続くパレスチナ難民は500万人を超える(UNHCR)。しかし、人種や宗教が違う中東からの避難民・難民の受け入れに米欧は後ろ向きである。

ポーランドの難民キャンプに避難しているウクライナ人女性。簡易ベッドが並んでいる(写真:AP/アフロ)