(岩田太郎:在米ジャーナリスト)
ロシアによるウクライナ侵略に対し、表面的に中立を装ってきた中国共産党。だが、ロシアのプーチン大統領と中国の習近平国家主席の間には、この侵略に関する事前の話し合いと申し合わせ合意があったと報じられている。
ウクライナの首都キーフ(キエフ)出身の国際学者グレンコ・アンドリー氏はいみじくも、「プーチン大統領は中国というバックがあるからこそ、欧米に対して強く出られる」と指摘している。今回の侵略も、その背景なしでは実行可能にはならなかったと思われる。
一方、習主席は2021年3月に、「2027年の人民解放軍創設100周年までに台湾解放を実現しなければならない」と明言している。そのテストケースとして、ロシアの電撃的なウクライナ作戦が成功裏に早期終結することに期待した上で、北京冬季オリンピック(2月)・パラリンピック(3月)の開催に臨んだフシがある。
恐らく、2014年3月にソチ冬季パラリンピック閉幕直後、ロシアが電撃的に進めたウクライナ領クリミアの併合作戦の成功が脳裏にあったのであろう。「だから、今回もうまくいく」「ウクライナは、台湾が中国に帰るように、ロシアに帰ってくる」と。
ところが、2月24日の侵攻開始から3週間以上が経っているが、今回の侵攻は成功とは言いがたい状況だ。
南部へルソン州をほぼ制圧できたものの、航空優勢は依然確保できず、地上戦で苦戦している。バリー・マカフリー元米陸軍大将が、「プーチン大統領は自らを戦略的惨事に追い込んだ」と評する通りだ。この戦争には明確な目的も大義も正義もないからだ。
その上、西側の発動した予想外に強力な金融制裁で、元来、国力の弱いロシアの経済はあっという間に崩壊寸前となった。
【参考記事】
◎ウクライナ侵攻、プーチンの攻撃性のウラにある切羽詰まった国内事情とは(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/69112)
英コンサルティング企業数社が「Consultancy.eu」で試算したロシア軍のウクライナにおける戦費は、1日当たり200億ドル(約2兆3666億円)にも上る。「ロシアの戦争継続に必要な資金や物資は5月初旬ころまでしか持たない」との、ウクライナ大統領府のオレクシー・アレストビッチ顧問の分析もある。